税務調査手続の法定化

　税務調査手続が、平成23年度税制改正で、国税通則法において法定化されました。国税通則法の改正で、その第七条の二に「国税の調査」の項目が新設され、これまで各税法ごとに規定されていた質問調査権が集約改正されると共に、事前通知、調査終了の際の手続、再調査などの税務調査の手続が法律上に明確化されています。この改正は、平成25年1月1日以後開始する税務調査から適用されます。
　 

１．税務調査の事前通知

　(1)納税義務者に対し実地の調査を行う場合には、あらかじめ、納税義務者と税務代理人に対して、調査を行う旨と以下に掲げる事項が通知されます。

　　①調査開始日

　　②調査を行う場所

　　③調査の目的

　　④調査の対象となる税目

　　⑤調査の対象となる期間

　　⑥調査の対象となる帳簿書類その他の物件

　　⑦その他政令で定める事項

　(2)合理的な理由がある場合には、調査日時又は場所の変更を求めることができます。

　(3)納税義務者の申告、過去の調査結果の内容、その営む事業内容に関する情報、その他の保有する情報から、「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にする恐れがある場合」や「その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼす恐れがあると認める場合」には事前通知を行わない場合もあります。

 

２．実地調査の際の手続

　(1)質問事項への回答と帳簿書類の提示・提出

　国税庁等の職員は、調査について必要がある時は、納税者に質問し、帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示もしくは提出を求めることができます。

国税庁等の職員の検査を忌避したり、帳簿書類等の提示・提出を拒否すると罰則の適用がありますので注意が必要です。

　(2)事前通知事項以外の事項

 事前通知事項以外の項目について、非違が疑われる場合には、改めて事前通知を要することなく、その項目についても質問することができます。

　(3)帳簿書類の預りと返還

　国税庁等の職員は、必要がある場合には、調査で提出された物件等を預ることができます。その際には、預り証が交付され、提出者の署名押印をすることになります。また、提出者から返還の求めがあった場合には、特段の支障がなければ、速やかに返還されます。

 

３．税務調査終了の際の手続

　(1)調査結果の説明と修正申告や期限後申告の勧奨

　　①更正決定等をすべきと認められない場合

　税務署長等は、実地調査の結果、更正決定などをすべきと認められない場合には、納税義務者に、その旨を書面によって通知します。

　　②更正決定等をすべきと認める場合

　税務調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、国税庁等の職員は納税者に対して、調査結果の内容（非違の内容、金額、理由）を説明し、その際には修正申告等を勧奨することができます。さらに、この税務調査の結果に関して修正申告等の提出があった場合には不服申立てをすることはできないが、更正の請求をすることはできる旨を説明し、その旨を記載した書面を交付します。

　(2)更正又は決定等の処分理由の記載

　税務署長等が、更正又は決定などの不利益処分や納税者からの申請を拒否する処分を行う場合には、その通知書に処分の理由を記載します。

 

４．再調査

　税務調査が完結した後に、税務調査の対象とした期間について、新たに得られた情報に照らし非違があると認められる場合には、改めて税務調査を行うことがあります。

平成24年12月10日